2020/06/08

「NFLはBlack Lives Matterを支持する」選手が迫ったビデオ発表のイキサツ

先月末の黒人暴行殺害事件を機に全米に広がったBlack Lives Matter デモンストレーションは、2週間目に入りましたが収まる気配はありません。

6月4日にはNFL選手が、それぞれのソーシャルメディアで同じビデオを投稿していました。この運動が始まって以来、生ぬるい声明を発表してきたNFLに代わって、はっきりと人種差別を糾弾し、Black Lives Matter を支持すると宣言しています。こちらがニューオーリンズ・セイントWRマイケル・トーマスさんのツイート。「NFLに代わってのメッセージ」とのこと。


「ジョージ・フロイドが殺害されてから10日経った。何回頼んだら、僕らの声を聞いてくれるようになるんだろう?どうしたらいい?僕らが警察に殺されたら?もし僕がジョージ・フロイドだったら?

僕らを黙らせることはできない。平和な抗議をする権利を主張する。長すぎる時間が経ってしまった。NFLを代表して、僕ら選手は次の宣言を耳にしたいんだ。

我々、ナショナルフットボールリーグは人種差別と、黒人に対する構造的抑圧を非難する。

我々、ナショナルフットボールリーグは、選手の平和な抗議活動を禁止したのは間違いだったと認める。

我々、ナショナルフットボールリーグはBlack Lives Matter を支持する」

NFLの有力選手が勢揃い。パワフルなビデオを作るなあ、と感心していました。そしたら、これが実は、NFLの職員が個人的にマイケル・トーマスさんに連絡を取り、製作されたビデオであることが報道されていました。

「リーグに届くコンテンツを作る手助けをしたい。僕はNFLのソーシャル担当職員で、会社が沈黙を続けていることを恥ずかしいと感じている。NFLは人種差別を非難する宣言をしていない。Black Lives Matter (黒人の生命も大切だ)と言っていない。

プレッシャーをかけるため協力したい。ビデオでキミの声を表現し、リーグに働きかけよう。もし興味があれば声をかけてくれ。一緒に仕事をしたいんだ」

とインスタグラムのDMでトーマスさんにメッセージを送ったという職員ミンターさん。面識もないので読まれないかもと思いましたが、15分後には返信が。そして、24時間後には、上のビデオが出来上がりました。

ミンターさんはNFLソーシャルメディア・クリエイティブディレクターという肩書の27歳白人。(ここで横顔が見えます)

今回のデモについてNFLはすでに声明を発表していましたが、曖昧そのもの。会社の姿勢に、社員の不満が高まっていたといいます。「昨年のベスト10プレイ」なんかを編集している場合じゃない。会社として、差別を糾弾する立場をはっきり示すべきだ。ミーティングではそういう話になるのに、会社は何もしない。

「僕らの声を聞いてもらえない。それなら自分たちでやるしかない」と語るミンターさん。それがマイケル・トーマスさんへのメッセージになりました。

ミンターさんともうひとりの職員がスクリプトを考え、トーマスさんが選手に声をかけてビデオを集めました。

木曜の朝、ミンターさんは製作中のビデオについて、一応上司に報告。上司はその上司へと報告し、30分もすると上層部とのズーム会議へと発展しました。解雇を覚悟していたというミンターさんでしたが、理解を得ることに成功。

ビデオが公開された翌日の金曜日、NFLは全体でズーム会議を行いました。論議が飛び交い、感情が高まり、涙が流れました。最終的には、コミッショナー・グッデルさんが、自身のビデオ撮影を決定。夕方には、NFLの声明として発表されました。

選手たちがNFLに語ってほしかったことを、コミッショナーは宣言しています。

4年前にキャパニック選手の抗議活動が問題になったのは、「国旗に敬意を示さないson of a bitchは叩き出せ」とほざく大統領がしゃしゃり出てきたのが大きな理由です。この人がまた文句をつけていますが、一体どうなるのか。

チームのオーナーがどういう態度を示すのか、これから注目していきたいです。

「人種差別を非難する」って、当ったり前のことなのに。国歌斉唱時に膝をつくどころか、クーラーに座ってバナナ食べてたマーション・リンチの姿が目に浮かぶわ・・・。

2020/06/04

「国旗に敬意を示さない人には賛同できない」ドリュー・ブリーズが炎上した件

ミネソタ州ミネアポリスでの警官による黒人男性暴行死事件をきっかけに始まった抗議デモンストレーションは全米に広がり、1週間が経っても収まる様子はありません。夜間外出禁止令が出ているにもかかわらず続くデモ。警察による暴力、黒人が簡単に意味もなく殺される社会の変革を求めて、たくさんの人が声をあげています。

私はアメリカ国境の北に住んでいるので、直接の関係はありません。しかし毎日ニュースで流れる映像を見ていると、国民が我慢できない瀬戸際に来ている切迫感がじわじわと伝わってきます。

黒人男性が白人警官に殺される。こんな事件もう何回も聞いたし、見た。先月はジョギングしてた黒人青年が白人に射殺された事件の報道もあった。ニュースにはならなくても、黒人というだけで嫌疑をかけられる、連行される、暴行を受けることが日常茶飯事であることは容易に想像できます。現在でけでなく、アメリカ史上ずっと。

ポケットから手を出しておくこと、急な身動きをしないこと、怖くても走って逃げないこと、口論しないこと、理不尽でも従順に従うこと。警官に遭遇した時のルールを、黒人の子どもたちは何度も親に教えられて育ちます。

「自分の夫と息子が、無事に帰ってきますように、と祈りながら毎日送り出すんです」とテレビで話していた黒人のお母さん。こんなプレッシャーを毎日感じながら生活するってどんな?

Black Lives Matter (黒人の命だって大切なんだ)という運動について、NFLのファンならコリン・キャパニック選手のことが思い浮かぶでしょう。2016年に、国歌斉唱時に片膝をついて抗議の姿勢を貫きました。

あの時から何も変わってないじゃん。

ニューヨークやロサンゼルスで、店のガラスを破って盗みをしたり、建物に放火したりする暴徒を眺めながら、「キャパニックって、平和に抗議活動をしてたんだ」と改めて思いました。でも非難された。世の中も全く変わらない。警官による黒人殺人事件はこれからも続く。

社会が自分を守ってくれないのなら、自分が社会の規律を守る必要があるのだろうか?と思った人がいても不思議じゃない。騒ぎを大きくしたい過激派が先導し、それに乗った人もたくさんいるでしょう。それと同時に、普通の人々の行き場のない閉塞感や政治への不満が爆発したのではないでしょうか。

そんな時に飛び出したニューオーリンズ・セインツQBドリュー・ブリーズさんの「国旗に敬意を示さない人には賛同できない」宣言。

私は白目をむきました。ドリュー・・・。世の中見てないの・・・?わざわざ出てきてそんな事言わなくてもいいやんか・・・。

この発言の何が衝撃的かというと、Black Lives Matterの活動の意義をブリーズが全く理解していないこと。今のアメリカを動かす社会現象であり、NFLでもくすぶっている問題です。あの時から何も学んでないの?チームメイトと会話をしてないの?自分の幸せな白い世界しか見えてないのか・・・。

僕のおじいちゃんは戦争に行ったんだよ。星条旗のために戦ったんだよ。と聞いても、あーそうそうよかったね、としか言えない気分。黒人兵士だって第二次世界大戦から帰ってきたけど、自分の国で虐げられたよ・・・。

ブリーズのこの発言は、チームメイトをはじめ、NFLの各選手から反論を招きました。マルコム・ジェンキンスさんは「なんで分かってくれないの」と涙声。

すると間もなく、グリーンベイ・パッカーズのQBアーロン・ロジャースさんが「いやいや、あれは国歌とか国旗について抗議してたワケじゃないスから」と発言する展開に。はや!



黒人選手だけじゃなくて、白人選手もどんどん意見を発表するのはとても良いことだと思います。この件に関しては、まず、今年のドラフト1位ジョー・バロウくんが真っ先に発言していました。


ブラックコミュニティはみんなの助けが必要だ。ずっと長い間、彼らの声は届かないままだった。耳を済ませて聞き、語ろう。これは政治がどうとかじゃない。人権の問題だ。

かっこよ。

シーホークスのLBボビー・ワグナーさん自身もデモに参加したと語っていたし、テキサンズQBデショーン・ワトソンくんのデモ参加写真も見ました。探してまたアップしますね。

普通に生活する黒人の人たちの大変さがわかる映画「ヘイト・ユー・ギブ」もおすすめです。

いったいアメリカどこへ行く・・・。