2021/04/21

アスリートにナニクソ根性は必要なのか トレバー・ローレンスの場合

みなさんこんにちは。NFLドラフトがいよいよ来週に迫りました。3つしか指名権のないシーホークスは一体どうする?とか、いろいろ気になっております。

今日は、全体1位指名確実と言われるクレムゾン大学QBトレバー・ローレンスくんについて書いてみたいと思います。先日、スポーツイラストレイテッド誌の記事で、「誰かを見返してやろうとか、そういう闘争心はない」と答えて、話題になってました。

例えば、6巡まで指名されなかった(ブレイディ)、背が低いためプロになれないと言われた(ラッセル・ウィルソン)、地元の49ersにスルーされた(ロジャース)、ワイドレシーバーへの転向を勧められた(ラマー・ジャクソン)、トルビスキーが先に指名された(マホームズ)、などなど。

「お前はムリ。ダメ」という烙印を押されたことで「クソ!チクショー!」と闘志をメラメラ燃やし、その結果、プロ選手として成功するパターンは多くあります。「侮った奴らにオレの力を証明してやる!」という気迫が、大きなエネルギーになる訳です。

ところが、ローレンスくんにはそれがない。

「ベストな自分になりたいからフットボールをする。自分の可能性を最大限に試したい。誰だってそう思うはずだ。じゃなかったら、自分を無駄にすることになる」

「説明が難しいな。フットボールには情熱を持っていて、それが僕にとって一番大切なことだ。だけど、何かを証明しようとか、誰かを見返そうとか、そんな気持ちはない。作れないし、作ろうとも思わない」

と言う彼。一方で、父親は

「彼は賞が欲しいわけじゃない。『何が何でもスーパーボウルを手に入れる』というタイプじゃないんだ」

と語り、彼をよく知る高校時代のコーチは

「明日フットボールをやめたとしても、普通に生きていくと思うよ」と、こだわりのない彼の様子を語ります。

エルウェイ、ペイトン・マニング、アンドリュー・ラック以来の有望選手と言われているトレバー・ローレンスは、幼少の頃からスターでした。

7歳で、すでに30メートルのミサイル弾を投げたといいます。

自分の息子をクォーターバックするつもりだったユースチームのコーチは、これを見て「この子と同じ町に住んでる限りクォーターバックはムリ」と、息子をワイドレーシーバーに。

トップレシーバーだったその息子も、成長するにつれ、ポジションの保持が難しくなります。ローレンスの球をキャッチしたいと、優秀な選手がぞくぞく集まってきたからです。

「いろんな所から編入生が来た。ついていくために一生懸命頑張ったよ。だけど中3の頃にはもう限界だった。みんな上手すぎた」

高校1年で先発QBとなり、先輩QBはタイトエンドに転向。試合の日は遠くから観客が押し寄せ、スタジアムは常に満席。立ち見席も出ました。試合後の地元レストランは大繁盛し、市長よりも有名な高校生に。

超エリート選手としてリクルートされ、クレムゾン大学に入学すると、4試合後には先発の座を奪い取り、1年目で全米チャンピオンに輝きます。

スター街道まっしぐら。挫折のカケラもありません。「ナニクソ根性」なんて生まれる余地はどこにもなし。

4歳年上の兄、チェイスくんの存在もあります。

仲が良く、弟のフットボールはもちろん応援しますが、スポーツには全く関心なし。個人的に知っている人が出場するわけでもない試合を観戦する人々がいるという事実が、彼には理解不能とのこと。

アートに興味があり、サイケデリックにも染まり、「まあいろいろやったけど・・人生をダメにはしてないさ」と語る、ヒッピー風の兄貴。

汗流して練習から帰ってきたら、カウチで兄貴が何か煙みたいなものを吸いながら「ヘイ、トレバー。元気かい?」なんつって映画なんか見てたら、どうします?いやー、人間っていろいろ、って思うしかないよね。

中学、高校と全米に名前が響き渡るにつれ、慢心も出るでしょう。その反面、悪口も多く聞くだろうし、そういうグチャグチャした成長期に「フットボールとかどうでもいい」という人が身近にいるって、安心するものじゃないでしょうか。

父親もまた、「神様はお前に素晴らしい才能をくれた。しかし、いずれはフットボールから得るものより、失くすものが多くなる。その時はやめなさい」と高校の時からアドバイスしてきました。

フットボールが大好き。才能も実力も自信もある。自分のベストを極めようと思う。しかし人生はフットボールだけではないことも知っている。って、なんと達観したルーキーでしょうか。

カレッジ最後の試合は全米選手権準決勝でオハイオ州立大学にボロ負けしました。「僕にできることはすべてやった。あの時点で、自分にもっと何かできるはずだ、と思うなら、それは自分が愚か」といたってクール。

ついこの間、長年の彼女と結婚式を挙げました。この時期の結婚に疑問を唱える人もいましたが、

「他人の目に奇妙に映るからといって、3年待つなんてことはしない。どうでもいい」

「ずっと一緒にいたい、結婚したい、生涯を共に過ごしたい人を見つけるって、誰にとっても重要なことだよね。それを僕たちはすでに見つけたんだ・・・最高じゃないか」

とも話しています。

下は2年前、大学のプレゼンテーションの様子ですが、「僕のヘアのお手入れ方法」というタイトル。

そんでタイトルの下に「トレバー・タッチダウンジーザス・ローレンス」と名前が。

自分をネタにするという、こういう客観的なところ、感心しちゃいます。外から自分を見れるって、大きな武器になるんじゃないかな。

とはいえ、ジャクソンビル・ジャガーズのQBになってですね、1年目からガンガン勝てるハズはないですよね?5連敗、6連敗とかなっちゃって、批判を浴びたりするでしょう?

そうなった時にどうするのか。カレッジでは2回しか負けたことがない人が、その苦境にどう立ち向かうのか、そんなところが見てみたい。

ジャガーズは、カレッジ出身のヘッドコーチ、アーバン・マイヤーが就任したことでも注目されています。いろいろ話題を提供してくれるでしょう。大いに期待したいです❗❗

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