2017/03/19

NFL鎮痛剤乱用についての裁判報告書

先週のことですが、NFLの鎮痛剤乱用に関する報告書がニュースになっていました。

NFLチームは、連邦が制定した薬物保管法、服用記録、運搬法の規定を守らずに処方薬を使用していた。選手に対し、どんな薬か、どんな副作用があるかの説明を怠っていた。それが原因で、今でも内臓疾患や慢性の痛みに苦しんでいると、NFLを引退した選手1800人が集団訴訟を起こしています。その報告書の一部が公表されました。

フットボールをしていれば怪我は避けられない。怪我をしてもプレイをするためには痛み止めが必須。副作用、後遺症を考えれば、強い薬の多用は避けたいが、しかし、やむを得ない・・というこの現状。

選手が鎮痛剤を多用していることは、これまでにも報道されていました。試合前のロッカールームでは、トラドールという強い鎮痛剤をお尻に注射してもらう選手が列を成し、それはTトレインと呼ばれている――という話もありました。

チームドクターは気軽に鎮痛剤を処方してくれるようだ、とも聞いた事がありますが、この報告書では、具体的な数字が挙がっています。


問題となっている鎮痛剤は、まずトラドールtoradol。依存症になることはありませんが、国によっては、手術後に病院内でしか使用されない強い薬です。錠剤、または皮下注射で服用します。

次に、バイコディンvicodin。オピオイド(アヘン物質)を成分とする薬なので、依存症になる場合があります。

そしてNSAID。炎症を防ぐ、痛みを和らげるなどの効用があります。

報告書に記載されたいくつかの事例を挙げると・・・

● 2010年、サンディエゴ・チャージャーズの選手が路上検問で止められた際、バイコディン100錠を所持していたことが発覚。麻薬取締局がNFLの調査に乗り出す。当時のチームドクターは2013年にチームを去ることに。

● 2009年シーズン、ニューヨーク・ジェッツが消費したトラドールは1178回分。バイコディンは1564回分。

1178をロースター53人で割ると22。選手一人当たり平均でトラドールを22回服用したことになります。もちろん、使用回数の少ない選手もいるでしょうが、22をはるかに上回る数で服用していた選手もいるはず。どのくらい上回るんだろう、と考えると、ちょっと空恐ろしいような気がします。

● 2012年シーズンにピッツバーグ・スティーラーズは7442回分のNSAIDとその他の処方薬を2123回分使用。(これでもNSAIDの使用量はリーグ10位、処方箋薬は14位)

● 2011年の調査では、644人の引退選手の22%が、現役時代に毎日6錠以上の鎮痛剤を服用していたと答えた。

● 2014年、32チーム中27チームから返答を得た調査では、平均26.7人(53人ロースターの半分以上)が、試合の日に少なくとも1回分のトラドールを使用。

2014年という、ごく最近の調査ですら、これ。私たちがテレビで試合を見ているその時、画面に映っている選手の半分以上が、強烈な鎮痛剤を投与しつつプレイしているということになります。

試合中に起こる怪我を予測して、あらかじめトラドールを打っておく。そういう場合も多くあるそうです。

リサーチが進み、鎮痛剤の過剰摂取による障害が明らかになるにつれて、昔のようにホイホイと医者が鎮痛剤を渡す、選手もそれを気軽に服用する、ということは少なくなってはいるでしょう。

しかし、フットボールをプレイする以上、痛みとどうやって付き合っていくかは、これからもずっと考えなければならない。事実を明るみに出す。そして、選手もリーグも鎮痛剤の危険性をしっかり認識する。そこから、少しずつ変えていくことになるのでは。

マリファナが合法化された州もあるので、鎮痛剤としての効用の研究もこれから盛んになるでしょう。NFLでは現在禁止となっていますが、将来は変わっていくのかもしれません。

脳震盪と鎮痛剤。NFLのダークサイド・・・。

0 件のコメント:

コメントを投稿