2019/04/15

アンソニー・バーがミネソタを選んだ日

LBアンソニー・バーさんは2014年ドラフト1巡全体9位でNFLミネソタ・バイキングスに入団。以後、チームの主力選手となり、プロボウルには4度選出されました。昨シーズンはバインキングスがルーキー契約5年オプションを行使し、シーズン後フリーエージェントに。

ニューヨーク・ジェッツが年平均15億円5年契約をオファーし、一度はそれを承諾したものの後悔の念に悩み、結局それよりも少ない契約金でバイキングスと再契約したことが先月ニュースになっていました。

その経緯をバーさんのエージェントが語っていたので紹介します。



3月11日月曜日

今年フリーエージェントが解禁となったのは3月13日ですが、その2日前には4時間の契約交渉が認められています。ジェッツの新ディフェンシブコーディーネーターは、アンソニー・バーを高く評価し、レイブンズより獲得したCJ・モーズリーと共にディフェンスの要として起用する意向でした。

そのジェッツが年15億円を提示。バイキングスはフリーエージェントで使える金額が5.2億円とサラリーキャップ的に厳しく、バーの放出はやむ終えない状況でした。ジェッツの金額にマッチすることは到底ムリ。

「ニューヨークに行くことが正しい選択だと、彼は知っていたよ。しかし心の奥底ではミネソタに残りたかった。その気持を私は感じていた」

と話すのは、エージェントのウィリアムズさん。年俸の大幅アップを知らせても、バーさんは浮かれることなく、「で、ミネソタはどう?」と繰り返していました。

午後5時、ウィリアムズさんがバーに電話を入れ、ジェッツ行きを改めて確認。「イエス」の答えをもらってジェッツ側にも報告し、契約の詳細をまとめることに。

その後バーさんと母親とのグループ通話で、お祝い気分を盛り上げるためフランク・シナトラの『ニューヨーク・ニューヨーク』をバックグラウンドに流したというウィリアムズさんですが(エージェントも大変ですねw)、バーさんの声は重く沈み、3人の会話はまるで通夜のようだったとのこと。

その間に契約の話が外部に漏れ、ミネソタを出ることがメディアで語られ始めると、バーさんの気持ちが揺れ、後悔を確信しました。

「人生で最大の間違いを犯したような気がする、彼はそう言ったんだ」とウィリアムズさん。すぐさまジェッツに電話を入れ、返事を一晩だけ待ってくれるよう頼みました。そしてバイキングスに連絡を取ります。

彼のニューヨーク行きを耳にしていたバイキングスは、エージェントからの電話にビックリ。ウィリアムズさんは切羽詰まった口調で、最後のオファーとして可能な金額を提示してくれないかと申し出ました。

エージェントとチーム側が急いで交渉をまとめ、午後8時、バーさんの手にはが2チームのオファーが。バイキングスのヘッドコーチであるジマーさんは、この間バーさんにテキストメッセージを何度か送り、チームに残ってほしい気持ちを伝えていました。

「その夜は朝方まで眠れなかった。天井をずっと見ていたんだ。未来を決める印のようなものが見えないかと。みんなに電話して、答えを見つけようとした」とバーさん。

3月12日火曜日

朝6時にウィリアムズさんはバーさんに電話を入れました。

「契約金が少なくても、自分が幸せになれる方を選択したらいい。契約期間が終わって10億や15億円多いことにしばられずに」と告げると、バーさんの心も決まっていました。両チームに連絡すると語り、ウィリアムズさん電話を切ります。

しかし、どこにも連絡せず、15分後にバーさんにまた電話。

「おめでとう!バイキングスに決まったぞ!って言ったんだ。そしたら彼が叫んだのさ。人生で最高の日だってね。私はこう言ったよ。『そういう反応がほしかったんだ。昨日はもらえなかったけど、今日はもらえた。今からチームに電話して決断を知らせてくるよ』って」

バイキングスとの5年契約は67.5億円でそのうち33億円が保証されています。年平均13.5億円は、ジェッツが提示した金額よりは少し低め。しかしバーさんと母親は、フェイスタイムをして涙を流して喜んだそう。

「彼がミネソタに戻るんだって言った瞬間、涙が出てきたわ。本当によかった。ほっとして、ありがたいことだと思いました。いろんな気持ちが混じっていました。始めたところに戻って、彼が大切にしている人たちと、第2の故郷とする街でまたやれるんです。なんて幸せなことなんでしょう」

とお母さん。バーさん本人は「本当の気持ちを押さえつけて、無理やり自分を納得させようとしていたんだ。でも、自分の心に従うなら、どんな結果でも受け入れられると思う」と語っていました。

フリーエージェントって、選手もチームもエージェントも、いろいろ大変ですね。チームを変わるって大陸を移動するわけだし、組織のカラーもあるし、自分が気に入る場所かどうかは実際に行ってやってみなきゃ分かりませんよね。フリーエージェントだって自分の思うチームに行けるかというとそうとは限らないし。

元シーホークスの(涙)FSアール・トーマスさんは、1年契約でカンザスシティに行くことになってたのに、一晩寝たら大型オファーがボルチモアから来ていて、申し訳なかったけど断りの電話を入れたと語っていました。

シーホークスは、現在QBウィルソンの契約更新から目が話せない状態です。ニューヨーク行きも噂されていますが、そんなのほんとやめて。最新の報道を手に汗握りながら待っているところ・・・。

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