2021/04/08

それぞれのドラフト物語 ダク・プレスコット&ラッセル・ウィルソン

みなさんこんにちは。今月はいよいよドラフトです。有力候補とされている数人のクォーターバックが、どの順で、どのチームに指名されるのかが、まず気になるところ。

しかし、1巡で指名された選手が間違いなくプロで活躍できるのかというと、案外そうでもありません。下位に埋もれていた選手が、実はプロボウル選手になったりする。一筋縄ではいかないところが、NFLを観る楽しみでもあります。

そんな見過ごされたクォーターバックのひとり、ダク・プレスコットが、2016年ドラフト4巡でダラス・カウボーイズに指名されたいきさつを紹介したいと思います。

その年のドラフト1位はQBジャレット・ゴフ、2位がQBカーソン・ウェンツ。プレスコットの前に計7人のクォーターバックが指名されました。

ダラスは全体4位でまずRBエリオットを指名。続いて、当時36歳QBトニー・ロモの後継者にと、メンフィス大学QBパクストン・リンチを狙っていました。次の指名権は34位。1巡中盤でリンチ指名が予想されるため、ダラスは9チームに電話しトレードアップを打診します。

興味を持ったのが26位指名権を持つシアトル・シーホークス。ダラスは2巡(34位)、4巡(101位)を差し出しますが、シアトルは2巡と3巡を要求。

「どうする?」ダラスのドラフトルームに沈黙が落ちました。

結局、シアトルはよりよい条件を提示したデンバー・ブロンコスに指名権を譲り、QBリンチはブロンコスへ。

肩をガックリ落としたカウボーイズのオーナー、ジェリー・ジョーンズは、翌日、苦悩の表情でこう語りました。

「今朝起きた時、昨日の決断をひどく後悔した。なぜ3巡を出さなかったのかと。私はいつだって最高級品には最高金額を払ってきた。バーゲンの安物買いは悔やむことが多い。ダラスの高層ビルから飛び降りたりはしない。大きな視点で見ることにしよう。だが、もう一度同じような機会があれば、3巡は放出する」

ドラフト3日目、ダラスのQBドラフトボードにあった名前は、1)コナー・クック、2)ダク・プレスコット。

4巡は99位、100位クリーブランド・ブラウンズ、101位ダラスから指名が始まります。クックを指名したいダラスは、101位と翌年6巡をブラウンズにオファーしますが、断られました。その年の6巡2つは?と条件を上げても、ダメ。

その間にレイダーズがブラウンズから100位指名権を獲得し、QBクックを指名。またもやQB獲得に失敗したダラス・カウボーイズは、4巡後半の指名権でQBダク・プレスコットを指名することになったのでした。

パクストン・リンチはブロンコスで4試合を先発し、2018年に解雇。コナー・クックは昨年春にXFLチームでバックアップを務め、XFLは解散。

一方、135位で指名されたQBプレスコットはカウボーイズの先発QBとして活躍し、今年3月に4年約160億円という大型契約を結びました。補償金額126億円。パトリック・マホームズに次ぐNFL史上2位の高額契約です。

下がお兄さんと喜ぶプレスコット。どっちがどっちか分からんけど。

ダク・プレスコットは3人兄弟の一番下で、シングルマザーの家庭に育ちました。大学の時にお母さんを癌で亡くし、昨年は上のお兄さんが自殺。プレスコット本人も鬱で苦しんだことを公表していました。そんなこともあってのこの大型契約は、本当に感無量だったことでしょう。

2012年ドラフトではQBラッセル・ウィルソンが3巡75位でシアトル・シーホークスに指名されました。その年1位はアンドリュー・ラック、2位ロバート・グリフィン3世。ウィルソンの前に指名されたQBは5人。

前年の10月、シアトルのGMシュナイダーはウィスコンシン大学を訪問し、ウィルソンに深く惚れ込みました。チームに戻って、スタッフに熱い思いを語ると、

「5フィート10インチのクォーターバック?その身長じゃコーナーバックだって取らんわ」

と疑問の声があがります。しかし、身長を別にすればQBラックに引けを取らないという、シュナイダーの高評価は変わりません。

ウィルソンは3−4巡での指名になるだろうとの予測。3巡指名が始まると、シアトルのドラフトルームには緊張が張り詰めました。QBを取るかもしれないビルズ、ジャガーズ、チーフス。息をのんでそれぞれの指名を待ちました。

幸い、ビルズはレシーバー、ジャガーズはパンター、チーフスはオフェンシブタックルを指名し、シアトルはウィルソン指名に成功します。

「彼と話すのが待ちきれなかった」とシュナイダー。

フィラデルフィア・イーグルスも3巡でウィルソン獲得を狙っていましたが、先取りされた形になりました。当時のイーグルヘッドコーチ、アンディ・リードはシュナイダーに電話し、「いい指名だ」と祝福の言葉を贈ったということです。

ということで、何があるか分からないドラフト。駆け引きがあり、読み違いが。期待はずれがあり、思いがけない幸運が。喜びが、ドラマが。

今年はトップ数人のQBがやたら話題となっていますが、3巡とか4巡とか、もっと下位にも有力選手が潜んでいるのかもしれません。

4月29日のドラフトは、クリーブランドで開催されます。ドラフト候補生も招待されているようなので、フレッシュな顔を見るのがメチャ楽しみです。

2 件のコメント:

  1. 湘南の戦術オタク2021/04/08 15:09

    初めて拝見させて頂きました。
    とても深い内容でした。

    感想は、アンディリードは、素晴らしいHCだと思います。

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    1. コメントありがとうございます。

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