コーチがすごいのか、それともQBがすごいのか。NFLの最強ペア。そのふたりの練習風景がチラッと垣間見える記事がありました。いや、ベリチックコーチが選手に厳しいというのは聞いていましたが、どうやらトム・ブレイディには人一倍辛らつにあたるらしい。いつでも、真っ先にこきおろされるのは、まずQB・・・。
そんな話を、ペイトリオッツに在籍していた選手たちが語っていました。ちょっと一部だけ紹介してみます。
The Tale of Tom Brady & Johnny Foxborough. @JennyVrentas dives deep on Bill Belichick’s relationship with his QB:https://t.co/WNxbQOHE9M pic.twitter.com/Qpih9MKWUw— The MMQB (@theMMQB) 21 January 2017
◆2005年8月トレーニングキャンプ:WRディオン・ブランチ
ペイトリオッツは前年3度目のスーパーボウル優勝。ブランチさんがMVPに選ばれ、その前2回はトム・ブレイディさんがMVPとなっています。トレーニングキャンプ中に調子よくパス&キャッチを決め、3日間で50回はパスをコンプリートしていました。それが気にくわなかったベリチックコーチは・・・
「おい、よく聞けマザーファッカーども。もうパスを投げるな。他のヤツに投げろ。このあと2日はディオンに投げるんじゃない」
ちょwwいきなり選手をマザーファッカー呼ばわり!唖然とします。しかし、これ一発でコーチの姿勢をズバリと伝えていますよね。冗談じゃないんだぞ、と。ブレイディさんは、2人のパスを完璧なものにしたいのだと反論しましたが、コーチは聞く耳を持ちませんでした。
「トムは2日間オレにはパスを投げなかった。コーチの意図を理解していたんだ」
とブランチさん。その年、ブランチさんはQBが放ったパス530のうち78をキャッチ。ナンバーワンターゲットではあったものの、他の選手も満遍なくパスをキャッチしました。
◆2002年9月:WRディオン・ブランチ
第4週でペイトリオッツはチャージャースに21対14で敗戦。普段以上にパスを投げた試合でした。その後、ミーティングでは選手をにらみつけながら、こう言ったベリチックコーチ。
「オレたちは50回もパスを投げるようなチームじゃないんだよ、くそったれが。もうこんなことはするな。オレたちのやり方じゃない」
一番にらまれていたのはブレイディさん。そりゃあQBだから自分のスタッツをよくしたい。しかし、ペイトリオッツの戦術は「パスを平均30回、あとはラン。固いディフェンスで勝つ」というのが基本でした。
「トムは腹を立てていた。若かったからね。マジで言ってんのかよ?って顔をしてた。だけど、次の週に投げたパスは30くらい。本来のやり方に戻ったのさ」
◆2007年シーズン最初のミーティング:WRドンテ・スタルワース
前年のペイトリオッツは、AFCチャンピオンシップで敗退。前半21対6のリードから逆転負けを喫しました。ミーティングはその反省から始まり、前シーズンのQBトム・ブレイディ最悪のプレイがフィルムに映し出されます。
「この投球はいったい何だ?そのへんのジョニー・フォックスボロだって、これよりいいパスを投げられる。彼を呼んできたっていいんだぞ」
と嫌味たらしく語るベリチックコーチ。フォックスボロはペイトリオッツ本拠地の地名です。「フォックスボロ高校でQBをしている高校生」という意味で「ジョニー・フォックスボロ」が使われています。MVPブレイディに向かって「高校生のほうがお前よりマシだ」と皆の前で言い放つコーチ。
「もっとひどい言葉も使っていたよ。オレと隣に座っていたランディ(・モス)は顔を見合わせて背筋を伸ばしたな。トムがこんなふうに言われるなら、安全なヤツはどこにもいない。ルーキーや有名なフリーエージェント選手もその場にいたんだが、これで全員がコーチのやり方を理解した。でも、ブレイディは挑戦が好きだからね。こんなの何とも思っていないよ。むしろ喜んでいたんじゃないかな」
◆2007年秋、練習:WRランディ・モス
QBとの5ヤードパスを練習していましたが、なぜかキャッチできない。次の日、ベリチックコーチがフィルムを見せて言うことには
「バカにしてんのか?どっかのオールプロレシーバーとオールプロクォータバックが5ヤードパスをコンプリートできないと?おい、トム。近所の高校生QBを連れてきて、5ヤードパスを見せてやろうか?」
皆の前でQBに屈辱的な言葉を吐くコーチに、チーム全員が息を呑みました。ランディ・モスさんはペイトリオッツが三つ目のチームで、この年が移籍1年目。
「聞いたことはあったが、実際に見たことはなかった。だけど、これこそ自分がヘッドコーチに求めていたものだ。勝つチームに行きたいとずっと思っていたんだ。それまで自分に欠けていたこと、これだという感触をペイトリオッツで得ることができた。短い時間だったが」
◆2007年11月:Cダン・コペン
ペイトリオッツはここまで10連勝。対ビルズ戦56対10で勝利の後、月曜日のミーティングで。
「50点も入れたんだから、いい気分でミーティングに参加したんだ。だけどコーチは、小さなミスを全部拾ってきて、みんなに見せつけた。長い時間をかけて。トム・ブレイディだって53人のロースターの誰だってお構いなしだ。ミーティングが終る時には、負け試合だったかのような気持ちになっていた」
◆2009年 2回目のミーティング:QBブライアン・ホイヤー
ブライアン・ホイヤーさんは、この年ドラフト外でペイトリオッツに入団しました。以後、バックアップQBを3年務めることになります。ベリチックコーチは、前日練習でのミスを指摘することで有名だったそう。初日の練習が終った、2日目のミーティングでのこと。
「部屋に入るなり電気が消えてフィルムが映ったんだ。前日の練習でのトムが映っていた。今でもはっきり覚えている。20~30ヤード先の(ウェス・)ウェルカーに投げようとしていた。5ヤードのヒッチルートはオープンだった。ベリチックはこう言ったんだ。
『ブレイディ、何年プレイしてるんだ?遠くの方にいる小人に向けて、パスを無理やり出すとは、どういうつもりだ?ランニングバックが5ヤードのヒッチでオープンになってるんだぞ。ファーストダウンだ。そうやって進んでいくんだ』
それを聞いて、こう思ったんだ。オレがチームに残れるワケない。コーチがこんな風にトム・ブレイディを扱うなら、オレなんか絶対無理だろって」
ホイヤーさんwwずいぶん謙虚wでも、ルーキーの2日目ですからね。そりゃあ驚いたことでしょう。ウェルカーさんだって(今、調べてみたら身長175cm)「小人」とか呼ばれてるwwひどいコーチw
ホイヤーさんはペイトリオッツを含め6チームを経験し、今年はシカゴ・ベアーズ所属でした。このビデオにも登場しています。2011年12月のワシントン・レッドスキンズ戦。トム・ブレイディがエンドゾーンでインターセプトされた直後の様子。
怒鳴り合いマッチのオフェンシブコーディネーターとトム・ブレイディさんを仲裁しようと、ぶかぶかコートで2人の間に入るホイヤーさんww
「2分後には、何もなかったようにふたりで次のオフェンスを話し合ってた。他の人には理解できないかもしれない。本気でやってるんだよ。コーチは躊躇なんかしない。だからいい選手になるんだ。かなり緊迫した状態になっても、トムはいつも理解して受け入れている」
これが強さじゃないでしょうかね、ブレイディさんの。自分の力が向上するならば、どんな意見でも受け入れる。厳しくコーチしてもらうことに感謝している。いくら辛らつな言葉を投げられても。
他のNFLコーチもベリチックさんみたいにコーチするのかといえば、そんなワケはないでしょう。あるAFCチームが、同じような方法をとってみたそうです。主力選手のミスをフィルムで見せ、反省を促してみたと。そうしたら、大型契約を交わしたばかりのベテラン選手が、皆の前で立ち上がってコーチに怒鳴り返したということです。
うーん、そうかもしれません。NFLの花形選手なんてエゴ強そう・・・。とすると、トム・ブレイディさんなんて、結構謙虚な人なのかも。競争心は人一倍強いんだろうけど。
「彼は私たちに高い要求をしてくる。もし私たちがそれに応えられない時には、はっきりとそう知らしめてくれる。10年選手だから、2回プロボウルに選ばれたからといって、見過ごされることはない。そんなことは彼にとってはどうでもいいことだ。これからもそれは変わらない」
とは、ベリチックコーチを評するトム・ブレイディさんの言葉。
こういう関係も、なんかすごいですよね。2人だけの世界ってかんじ・・・。