最優秀コーチ賞の呼び声も高いナギーさん、10年前は新築住宅のセールスマンをしていたそうです。フットボールを諦め、一度は家庭のために堅実な仕事を選んだものの、紆余曲折を経てコーチ職を獲得した彼の記事を紹介します。
Matt Nagy tried like hell to quit football. He failed. From selling new home construction to Super Bowl dreams: The unlikely story of the coach who resurrected the Bears. https://t.co/qONu98v0AR— Wayne Drehs (@espnWD) January 2, 2019
高校時代はクォーターバック。しかしで有名大学からの奨学金オファーは届かず、デラウェア大学へ。卒業後NFLからは声がかからず、グリーンベイ・パッカーズのトライアウトに挑戦しました。しかし不合格。アリーナリーグのフットボール選手となりました。2008年まで選手生活を続けましたが、リーグは閉鎖となり、新しい就職先を迫られます。
この時ナギーさんは30歳。4人家族で子供はもう2人増える予定、家のローンもありました。自分のキャリアとなるしっかりした仕事に就かなければ。「経済的にも精神的にもキツい時期だったよ」とナギーさん。
アリーナ時代のトレーナーに勧められ、ある会社社長と会うことになったのが2008年の秋。(このトレーナーは現在ボルチモア・レイブンズのスタッフで、当時この経営者のパーソナルトレーナーを務めていました)
トレーナーに執拗に頼まれて、しぶしぶ夕食の約束をした社長はラリー・ウィズダムさんといい、住宅建築・販売業を営んでいましたが、世間には不況の風が吹いていました。
「人々の生活がかかっていた。負債を抱え倒産する業者もあった。そんな時に、未経験者と会って話す?訳が分からない話だ」
乗り気ではなかったのに、ナギーさんと会い、話すうちにその人柄に引き込まれました。誠実で自信に溢れ、頭も切れる。コミュニケーション能力も秀でている。人間味があり、導けば大きな力を発揮するだろう。
「今、シカゴの人々が愛する彼の素晴らしいところが、その夜に見えていたんだよ」と語るウィズダムさん。
「経験は無いのに、君は私に仕事をくれという。沢山の人が求める仕事だ。なぜ君を雇うべきなのか、説明してくれ」
そう問われ、ナギーさんは躊躇することなく、社員の誰よりも熱心に仕事に取り組み会社のリーダーになることを約束しました。フットボールは過去のこと。妻とも相談済みである。ビジネスの成功がこれからの目標。フットボールはボランティアでコーチをするだけ。
さらに2回ほど会った後、提示されたのは出来高制のセールス職。家族の扶養にはを定額の収入が必要だと交渉し、年収1000万円の固定給を社長に納得させました。(すごいね!)
「ビジネス的な決断ではなく、直感だった。長期的に考えれば、マットは会社に利益をもたらしてくれる。そう信じたんだ。将来に賭けたんだよ」
「ラリーが僕の人生に現れて、こんな風に受け入れてくれるなんて。人とのめぐり逢いには何か理由があるのかもしれない。彼は僕の面倒を見てくれたんだ」と語るナギーさん。
就職後、仕事は順調で4週間で6件の住宅販売をするまでになりましたが、数ヶ月後、フットボールが手招きを。
大学時代のチームメイトで、当時フィラデルフィア・イーグルス職員だったブレッド・ヴィーチから、3週間のトレーニングキャンプでコーチのインターンをしないかと誘われたのでした。(ヴィーチさんは現在カンザスシティ・チーフスのGM)
仕事を頂いて感謝している。フットボールは辞めたと言ったのに、こんな話を持ち出して申し訳ない。社長がノーと言えば、もちろん自分はこの話を断る。軌道に乗った仕事の方が大事だし、家族もいる。と、ナギーさんが打ち明けると、意外なことにウィズダムさんからはイエスの返事が。
「仕事上でも成長するだろうと思ったんだ。戻ったら家をどんどん売ってくれるだろう。精一杯やるだけやって来い。終わったらここに帰って仕事に戻るだろう」
キャンプではクォーターバックが故障したため、急遽ナギーさんが80人ロースターに加わることもありましたが、キャンプ後は予定通り住宅販売の仕事に戻りました。
すると8ヶ月後、イーグルスのコーチ、アンディ・リードさんから電話が舞い込みました。アシスタントをしてみないか。年収は450万円。ほとんどが下働きになる。しかしNFLのドアに滑り込むことができる。
「彼は私を裏切るようでつらいと言っていた。とても言いにくそうだった。だから私は言ったんだ。マット、君は正しいことをしているよ。正直に、ありのままの気持ちを伝えているじゃないか。何か大きなことが始まるのかもしれない。自分の夢を追ったらいい。どこに行けるか、君にも私にも分からない。夢を追うんだよ」
夜に電話をかけてきたナギーさんに、ウィズダムさんはそう伝えました。
それから1年間、ナギーさんは朝3時に起床して自宅のランカスターからフィラデルフィアまで160 kmを車で通勤しました。時にはイーグルスの施設に泊まり込むことも。
「アシスタントのアシスタントだった。一度入ってしまえば、自分にはできると信じていた。執拗に、執念を持って、徹底的にやり抜く意思を持っていたら、機会さえあれば何だってできる」
イーグルスでは、ダグ・ペダーソンの跡を辿りました。2010年にリードさんがペダーソンさんをQBコーチに任命するとナギーさんはクォリティコントロールコーチに。ペダーソンさんがカンザスシティでオフェンシブコーディネーターになるとナギーさんはQBコーチに。2016年にペダーソンさんがイーグルスのヘッドコーチに就任すると、リードさんはチーフスのOCにナギーさんを指名しました。
「マットが昇進するのは当たり前なんだ。選手だけでなく、コーチ陣からもすぐ信頼を勝ち取るんだ」と評価するのは、NFLへのきっかけを作ったヴァーチさん。
リードさんの元、カンザスシティでOCを2年間務めた後、2018年シカゴ・ベアーズのヘッドコーチ職にマット・ナギーさんは就任しました。
オフシーズンのNFLミーティングで、スーパーボウル優勝後のペダーソンさんに会った時、「後を継いで、ヴィンス・ロンバルディ・トロフィーを取るからな」とナギーさんは語ったそうです。
そんな2人が今シーズン、ワイルドカードで対戦します。そして向こう側のAFCには師匠アンディ・リードさんが控えています。
さて、10年前の出会いからナギーさんとラリー・ウィズダムさんは親交を続け、チーフスやイーグルスの試合に招待したこともありました。が、実はウィズダムさんはシカゴの郊外で生まれ育った、根っからのベアーズファン。家族一同、熱狂的に応援しています。
「まさか、こんなことになるとはね」とウィズダムさんが言えば、「ラリーはダイハードなベアーズファンなんだ。人生ってクレイジーだね」とナギーさん。
かつての雇用主をベアーズの施設に招待し、案内もしました。ベアーズが、あと3回勝てばスーパーボウル出場なんて、ウィズダムさんは信じられません。
「マットのことを嬉しく思う。ベアーズファンとしても嬉しいんだけどね。スーパーボウルが欲しいな。彼が導いてくれることになってたんだな。でもそれは彼が魔法の杖を振ったとか、正しいプレイコールしたからじゃない。彼の指導力なんだ。内に秘めた強さ。周りの人間の能力を引き出す力。マットを信じているよ。10年前と同じように。これから何が起こるか、待ちきれないよ」
と語っています。
上の写真は左からベアーズGM、ラリー・ウィズダムさん、ナギー、ウィズダムさんの息子です。ベアーズの施設、ハラスホールを訪れた時のもの。
ナギーさん、そういやサンバイザーが好きみたいですけど、それもペダーソンさんの真似してるのかな?シカゴって寒いだろうに、今週末の試合もサンバイザーかな・・・なんてどーでもいいことを気にしながら、週末のイーグルス対ベアーズ戦を楽しみにしたいです。どっちかと言えば、ベアーズが勝つような気がするけど・・・・・。どうかな?
いい話をありがとう。マジで泣けた。
返信削除この人持ってますね。苦労すると人は強くなるからなあ。(髪の毛ないけど)毛並みもいいし。兄弟子ペダーソン超えるわきっと。(自分はMINファンなので)いやだなあ。先が思いやられるなあ。
マジメ、セールス上手=口がうまい→指導者向きてことだし。
ハゲなのに堂々としてるつうのもええね。サンバイザーをワンポイントにしてるのかしらん。(自分がボーズだからよくわかるんだけど被り物をしたほうが暖かい)きっと寒さに強いのね。
SBでBALに負けると思う。自分ラマジャクファンなのでバイアスかかってますが。
最近御ブログ読み始めました。読みやすくて面白い。ありがとう。
よく思うんですけど男性はハゲを気にしすぎじゃないですかね。自然の成り行きを気にしても勝てないし、髪の毛なんかどーでもいいんじゃないですか。それよりイキイキした顔してるほうがずーっとかっこいいと思います。
削除ナギーさんいい顔してますよね!
どうなんですかね。人によると思いますけど。仰る通り気にし過ぎだと思うけど、ハゲの人には深刻な問題じゃないのかな。ナギーさん兄弟子より情熱的らしい。いいすね、熱い人好きです。
返信削除マット ナギー ペダーソン リードHCのこれまでの経緯と関係を考えると、ニック・フォールズのベアーズ移籍は当然のことで、いい人間関係を考えると、ベアーズでのフォールズの成功は、充分に予想できる。
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