ロケットさんの引退のことは前にも書いたので、怪我の経緯とかはそちらを参照していただくことにして、今回の記事で印象的だったことを少し紹介します。
=前の記事はここです=
★ シーホークスのリカルド・ロケットさんが引退と
★ リカルド・ロケットさんの引退記者会見で、じーん・・・
"I want to help people. Like so many people along the way helped me."@RicardoLockette's new purpose in retirement: https://t.co/IVUuy3WDsx— The Players' Tribune (@PlayersTribune) 2016年7月5日
フィールドに倒れたロケットさんが動かすことができたのは、目だけ。自分に何が起きたか理解できませんでした。完全な無力感。「神様、助けて。オレが存在する理由があるのは知ってる。ここで助けてくれたら、他の人の人生を変えてみせるよ」と心の中で唱えたそうです。
ロケットさんがそう思ったのは、これが2度目。大学生の時に、女の子と話していたら、その子のボーイフレンドに銃を突きつけられたことがありました。リボルバーに込められた弾丸がはっきり見え、死ぬかも、と思ったそうです。
「助けてくれたら、他の人の人生を変えてみせる」と、その時約束したロケットさん。その場は、なんとかボーイフレンドと話すことができました。
数年後に再び、カウボーイズのスタジアムで同じことを祈っている自分。
「車や宝石、大きな家、スーパーボウル、そんなものは何の価値もなかった。オレには、もともと何もなかったんだ。ドラフト外。練習生。何回も解雇された。そうしているうち、スーパーボウルに3回連続出場。(注:サンフランシスコで1回、シアトルで2回)
『100ドルと夢だけ』ってよく言ってたんだ。ドラフト外でシーホークスのトレーニングキャンプに来た時、オレの持ち物は、ジムバックに入る服と、大学のレシーバー用グラブと100ドルだけだったのさ。
黒のランボルギーニとベッドルームが7つある家が夢だったこともある。だけど、見てみなよ。地面の上で動けもしない。
家族にもう一度会いたい。子どもたちを抱きしめたい。それしか思いつかなかった」
そしてロケットさんは思い出します。この日は娘さんの10歳の誕生日で、試合を見にスタジアムに来ていたんだと。
「それなのにオレは動けずにチームメイトやトレーナーに囲まれている。神様、助けてくれ」
病院で、首の靭帯と軟骨がひどく損傷していると診断されました。トレーナーや救急隊員が間違った方向に動かしていたら、チームメートが体を支えようとしていたら、間違いなく死んでいたはずだと医師に告げられます。
「オレの命は、正しい人たちの手にたくされていたんだ。この日、オレはすばらしい人たちに囲まれていたんだ。みんながオレを救ってくれたんだ」
ユニホームのまま、病院のベッドに横たわるロケットさん。ドアの外からは、娘さんが面会を願う声が聞こえてきます。こんな自分を見せたくない。だって、「パパはロックスターだ。何だってできるんだ」っていつも言っていたから。娘に「わたしだって何だってできる」と思ってほしくて語り続けていた言葉。
「娘が部屋に入ってきたとき。ああ。それが世界のすべてだった。このためにオレは戦うんだ」
「心配しなくていいよ。そんなにひどくない。お医者さんが首の周りに何か巻いてくれるから、そしたら大丈夫だ。そう言ったんだ。そしたら娘が泣き出した」
「大丈夫だよ。パパは何だっけ?」
「ロックスターよ」
「そう。ロックスターだ。何だってできるんだ。お前もだぞ」
そして娘さんはパパにキスして、看護婦さんに連れられて退出したそうです。
シアトル・シーホークスのコーチ、ピート・キャロルさんがよく口にしていたという言葉についても語っています。それは、「お前たちは、一時しかない、おとぎ話の中で生きているんだぞ」という言葉。
ファンは、一時だけのもの。コーチだって。自分を愛してくれるチームメイトだって、一時的なものなんだ。今住んでいる大きな家だって。
今あるものを存分に楽しんだらいい。だけど、自分を幸福にしてくれるのは、そんなものじゃない。
このコーチの言葉が理解できなかったというロケットさん。でも、今月、こんなことがありました。
もうトレーニングウェアやシューズは必要ないので袋に入れ、ダウンタウンのホームレスの人たちにでもあげようと外に出ました。自分と同じくらいの体格の、年老いた黒人を見つけ、「この服、着てくれませんか?」と声をかけたそうです。
でも、返事がない。近寄って、しばらく話しかけていたら、その人の目から涙があふれました。近くのベンチに座って、話を聞きました。
その老人は博士号も持ち、普通に生活をしていましたが、交通事故で家族全員を失ってから、生きる気力を失ったのだと。
その人の話を聞くことはセラピーみたいだったとロケットさんは語ります。そして、その話を聞くうちに、すべてが分かったような気がしたと。
フィールドで、ロケットさんは無力だった。それは、NFLの選手として夢を追いかけていた、それまでの自分とは天と地ほども違う場所。突然、ひとりでは何も出来ないところに放り出された自分自身。誰かの助けを借りなければ、指一本動かすこともできない場所。
救急隊員がいなかったら、今こうして文を書いている自分はない。オレの面倒を見てくれた人たち。プライベートジェットを出してくれたオーナー。ファンが送ってくれたカード、メール。数え切れないほどの励まし。そして、引退した今でも、時々連絡をくれるチームメイト。
マーショーン・リンチさんも引退しましたが、今でも、試合のビデオを送って冗談を言ったりしているそうです。ダラスの病院でも一晩ずっとそばについていてくれました。ロケットさんが首を固定されて動けないというのに、看護婦さん相手に冗談をかまし続けて、「オレの命を危険にさらすくらいだった」とww
「自分の人生を振り返って、スーパーボウルのことを一番覚えているかというと、そうじゃない。覚えているのは、こんな病院での夜のこと。笑いと愛。つらい時ならなおさら。だって、オレは首にギプスしてるんだよ。動けないんだ。思いっきり泣いたあとなんだよ。なのに、こいつはオレを笑わせようとしてるんだよ、苦痛を忘れさせるためにさ」
うううううう・・・。
「こんな精神、喜びを受け止めて、それを必要としている人に広げたい。人を助けたいんだ。救急隊員が自分を助けてくれたように。マーショーンが助けてくれたように。たくさんの人たちが、今までずっとオレを助けてくれたように」
「神様に命を救ってもらった代償を払わないと。それが、オレの新しい山だ。またふもとに戻ったんだ。オレは登るよ。登って、登る途中で、素晴らしい人たちにも出会うんだ。そして出会う人たちを、いっしょに山の上まで連れて行くんだ」
「やることが終った後、キャロルコーチが言っていた一時のおとぎ話が終った後、オレたちは自分自身に問いかけてみなけりゃ。なぜオレたちは、この世界に存在しているんだろうって」
「オレは、なぜここにいるのか、分かったような気がするよ」
というような手記でした。
キャロルコーチの言葉は"You live in a temporary fairy tale."っていうんですが、これ、すごく心に残りました。この世のすべても temporary fairly taleっていう気がするな・・・。
ってことで、ロケットさんの記事の最後にはマーショーンの「なんでオレがここにいるのか、あんた知ってんだろ You know why I am here.」のビデオが貼ってあったので、ここにも貼っときます。
マーショーン!!おーいい!!
0 件のコメント:
コメントを投稿